製造業で使える「最低限の統計」をマスターする方法

僕は10年以上製造業で働いています。
俗にいう、スタッフという役割で現場に行ってデータを集めたり、分析したりしています。

その中で先日、大卒(正確には大学院卒)の新入社員が入ってきたのでちょっと質問をしてみました。

 

「統計ってどれくらい知ってる?」
「・・・恥ずかしながら、全く知識ないです」
(僕が入社した時と一緒だ・・・)

 

統計学は最強の学問って本が出版された辺りから、統計学ブームだなと感じていました。
ただ、大学で統計を教えている所も少なく、研究で活用している人も少ないのが実態なんだろうなと思いました。

しかし、製造業では統計の知識は必須となります。
というか、これを分からずにモノを製造・生産して利益を得るのは不可能です(ただ造るだけなら誰でも出来るますが)。

ただ、統計学といえばちゃんとした学問で、やろうと思えばどこまででも勉強が出来てしまい終わりはありません。
一方で多くの人は「統計の知識がほしい」と思ったとしても、必要としているのはそんな深い知識ではないと思います。

そのため今回は製造業で最低限知っておけば役に立つ統計の知識とその勉強法をまとめてみました。

・製造業で働いているけど、実は統計を使った事がない
・統計の何を勉強すればいいのか分からない
・言葉は知っているけど、使い方が分からない

 

製造業に求められていること

まず初めに製造業に求められていることは下記になります。

「規格内の製品を安定的に供給する事」

ポイントは「①規格内」と「②安定的に」です。

まずはこの項目に関連する統計的な知識を身に着けておけば、統計的手法で管理して製造を行うことが出来ます。

 

規格内に製造するとは?

多くの製品には「規格」が設けられています(多くはお客さんと取り決めたものですね)。
例えば大きさ、重さ、色、味、などの製品を特徴付ける機能に規格があり、その企画を満足するように製造が行われています。

しかし、工場で造った「すべての製品」が規格を満たす訳ではありません。
そのため、この規格内に入ったり入らなかったりとする「バラつき」をどのように管理するかが製造業では大切になります。

このバラつきを数値として扱えるのが統計学です。
数値で扱えれるだけで、会話内で感覚的な表現がなくなり、問題の認識も明瞭になります。

安定的に届けるための工夫を支える技術

もう一つ大切な事として、需要に見合うように供給をする責任もあります。
ただ需要は変動します。
急に「2倍の量」が欲しいと言われることもあります。
その中で製造業で働いている人が行うことは「カイゼン」です。

いわゆる「改善」のこと。カイゼンと表記すると、おもに製造業の生産現場で行われている作業の見直し活動のことを指します。作業効率の向上や安全性の確保などに関して、経営陣から指示されるのではなく、現場の作業者が中心となって知恵を出し合い、ボトムアップで問題解決をはかっていく点に特徴があります。この概念は海外にも「kaizen」という名前で広く普及し、とくにトヨタ自動車のカイゼンは有名
参考:https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%82%BC%E3%83%B3-802129

カイゼンの内容はさまざまですが、主に製造条件を変える事があると思います。
さて、この時に変更前後で品質に差がない事をどうやって証明するか?

これも統計学で出来てしまいます。

まずはこの統計知識を身に付けよう

・標準偏差
・検定

一旦このたった2つの単元が分かっていれば、製造業の仕事で活用出来ると思います(もちろんもっと色々知っていた方がいいのですが、最低ラインだと思ってください)。

 

バラつきには標準偏差で

「標準偏差」はバラつきを表します。
こちらはよく使っている人が多いのではないでしょうか?
統計を学んでいても最初の方に出てくるため、初学者でも知っていると思います。

ちょっと使い方を紹介します。

例えば、ある材料に穴を開ける加工をしてたとします。
お客さんから「穴の直径を10mm±0.4mmで加工して納品してほしい」と依頼がありました。
この時この要望を受けていいのか、それとも無茶なのかを判断しないといけません。
どのようにして対応すればいいでしょうか?

このような時に役に立つのが標準偏差(記号でσ(シグマ)を使います)です。
実際にいくつかのサンプルの直径を測定して、どれくらいの確率で顧客要望を満足するのかを判断出来ます。

 

また別の使い方として、「管理図」にも活用出来ます。
「管理図」というのは、QC7つ道具の一つで工程内でのバラつきを偶然なのか、異常なのか見分けるグラフです。
ここでも標準偏差の考え方が用いられています。

「管理図」は「偶然のばらつき」と「異常原因によるばらつき」を区別することができます。
参照:https://www.sk-quality.com/qc7/qc705_kanrizu.html

 

以上の様に、何かバラつきに関するものであれば標準偏差を用いると数値での判断が可能になります。

ちなみに、統計学には同じ様にバラつきを表す表現として「分散」というのがありますが、こちらはあまり使いません。
というのも、単位が変わってしまうからです

製造業でバラつきを表すなら「標準偏差」です。

 

差があるのか見分ける検定

次は「検定」です。

多分これが使えない人が多いと思います。
使えない理由として、理解しにくいというのが挙げられます。
先程の標準偏差は数値で表す事が出来るので、大小で判断が出来ます。

一方で、検定では「有意水準1%で棄却されます」という結論が訳分からん表現になってしまいます。
もちろん理解のある人同士が話せば、非常に有益な会話になりますが、片方が知らなかったら話が通じません。

社内で有効に使うためには、「この場合は検定を用いて判断する」というルールを決めておいた方がいいかもしれませんね。

 

では、どんな時に使えるのかを紹介します。

先程と同じ様に穴を開ける加工をしていたとします。
この生産性を高めるために、切削油をAからBへと変更してみました。
さて、本当に変更した効果があったのか判断する必要があります。
どのようにして判断しますか?

また、老朽化していた設備を更新しました
その後同じ品質で製造出来ているか確認するために、更新前後のデータを比較してみました。
すると、特性の平均値がちょっとズレています。
さて、これは本当に差があるのか、偶然なのか?どのようにして判断しますか?

こんな時に役に立つのが「検定」です。

検定は「最初に仮説を立て、実際に起こった結果を確率的に検証し、結論を導く」という手順で行います。結論を導くには「背理法(はいりほう)」を用います。背理法とは「最初に仮説を設定し、仮説が正しいとした条件で考えて矛盾が起こった場合に仮説が間違っていると判断する」方法のことです。
参照:https://bellcurve.jp/statistics/course/9309.html

ものすごく簡単に言うと、2つの現象を統計的に比較して差があるか確認する方法です。
主に「平均」と「分散(バラつき)」が検定の対象になります

つまり、上記に出した事例を統計的に確かめる事が出来ます。

 

統計の勉強法

これまで紹介してきた2つの項目を勉強するおすすめな方法をご紹介します。

それは下記の資格の勉強をする事です。

QC検定 2級
統計検定 2級

これらの資格の勉強をすると実際の計算も自分でするので、かなり役に立つと思います。

特にQC検定は製造業のための資格と言ってもいいくらい、実務に沿った問題が出題されます
(統計以外の問題も多いので、統計のみ勉強したいとい方は統計検定の方がいいかもしれません)。

どちらも標準偏差や検定が出題範囲に入っていて、これら資格の勉強をするだけで上記で紹介した事例について統計的に考え、答えが出せるようになります。

 

QC検定2級に合格した話

ちなみに僕は両方とも勉強して合格しました。これだけで同僚と圧倒的に差がついたと思っています。

QC検定は会社から取るように指示される場合もあるかもしれませんが、2級はやった方がいいと思います(3級は正直簡単すぎてあまり役に立たないかもしれません)。

 

これまで、製造業で使える統計学を紹介してきました。
もちろん統計学を深く理解している方からしたら、当たり前のような事を述べていると思います。
しかし、意外にちゃんと使えていない人が多いと思っています。

それは、どちらかと言うと現場の経験を一番優先にしてきた歴史がある職場であればなおさらかもしれません。

一度、統計的にこれまでの仕事を振り返ってみると新しい発見があるかもしれません。
下記の統計検定について書いたブログも参考に勉強してみてください。

統計検定2級を勉強した話

 

>最強のWordPressテーマ「THE THOR」

最強のWordPressテーマ「THE THOR」

本当にブロガーさんやアフィリエイターさんのためになる日本一のテーマにしたいと思っていますので、些細なことでも気が付いたのであればご報告いただけると幸いです。ご要望も、バグ報告も喜んで承っております!

日本国内のテーマでナンバー1を目指しております。どうか皆様のお力をお貸しください。よろしくおねがいいたします。

CTR IMG