製造業で品質改善をするなら品質工学を学べー問題解決よりも大切な事が分かるー

  • 2019年5月26日
  • 2021年5月23日
  • 勉強
僕は大学卒業してからずっと製造業で働いています。
その業務のほとんどは生産性と品質改善です。
その中で、「品質工学(タグチメソッド)」を知って、少し勉強してみました。
今回は具体的な計算や方法などには深く触れず、「品質工学」を勉強して「品質改善」の本質ってこれだなと感じた事があったので、ここでシェアさせてください。

学んだ品質工学の本

今回は下記の本を読んで学びました。
こちらの本は小説形式になっていて、非常に理解しやすい良書でした。
もちろんその分厳密な計算式などは出てきませんが、僕はこれを読んで非常に参考になりました
品質工学をどう実際の開発現場に活かすが書かれています。

品質工学とは

まず初めにそもそも品質工学とは何か。
品質工学は別名「タグチメソッド」とも呼ばれています。
そう、実は発案者は日本人の方です。
田口玄一さんが半世紀かけ独力で作り上げたのが、このタグチメソッドです。

なぜ2つ呼び方があるかと言うと、初めに注目されたのは欧米でした
そこでまずタグチメソッドと呼ばれており、その後逆輸入の様な形で品質工学として日本にも普及しました

 

品質工学とは、「機能のバラつきを最小限に抑え、社会的損失を最小限にするための製品設計方法」と言われています。
ちょっと分かりにくいですね。
簡単に言ってみると「品質に影響する因子を設計段階から見つけておけよ」となります。

 

製造業では、製品の品質を規格内にする事が求められています(これを品質管理と言いいます)。
一方で顧客が求めているのは、その製品の機能がいつでもどこでも発揮される事です。
ここに差があります。
この差のために、工場で作った時は合格なのに、市場に出てクレームを受けたなどが出てしまいます。
こんな時、品質工学が役に立つかもしれません。

 

品質工学のオススメ記事

品質改善の本質

実は上述した状況は、上で紹介した本の状況と同じです。
この状況の中、製造業で働く主人公は初めは疑心暗鬼になりながら品質工学を学びます。
そして、製品の品質を改善させていきます。

 

ここで品質不良が出た時に製造現場(実際に製品を作っている所)では何をしているか紹介させてください(実は僕の仕事もこれに近いので)。
製造現場では、製品を造るための「条件」を色々と持っており、これら複数の条件を各製品に合わせて様々に設定しています。
もし製品に不良が発生した場合は、まず条件を調査し、各条件が設定通りになっているか、何か変動がないかなどを確認します。
そして、それでも原因が分からない場合は、その条件の中の一番影響しそうな項目を変更し良品が造れる様にします。
つまり、品質を規格内にするために条件を変更しているのです。

 

ニヒルさん

別に悪い事ではありません。

原因が分かるまで生産を止める訳にはいかないので
しかしながら、根本的な対策をしないとモグラ叩きの様になってしまいます。

ここで品質工学の考えを取り入れてみると、品質改善の本質は何かが分かります
上記の様なモグラ叩きの対応は「今の条件設定が悪かっただけで、必ず適切な条件がある」という立場に立っています。
しかし、それは本当でしょうか?
もしかしたら、そもそもその製品を設計した段階で「ある確率で不良が出る状態」になっているのではないでしょうか?
もしそうであれば、いくら条件を変更してもムダです。

 

品質改善の本質は、

今の条件だけでは品質不良をなくせないかもしれない、と疑う事

です。この考えだけで状況を変える事が出来ます。

実際にやってみた

僕が現場であった実例を紹介します。
僕の会社では金属の加工をしているのですが、ある新しい製品で表面に変な凹凸が発生し始めました。
上司からは製造条件をすべて確認しろ、と指示が出て確認しましたがいつとも変わりませんでした。
とにかく、影響しそうな条件を変更しましたが、一度収まりまた再発するを繰り返していました

 

この時に僕は「今分かっている条件を変えてもムダかもしれない」と思い。設計を見直しました
すると、他の製品より硬い製品を造るなのに、加工するための道具が他の製品と同じ硬さの物を使用する様になっていました。
これを上司に報告すると「そりゃーどんだけ条件変えてもムダやわ」となりました。

当たり前の様に思えると思います。
しかし、この様な考え方を出来るかが、品質を本質的に改善する方法になります。

 

本当の難しさ

でも、今回は設計側の問題がすぐ分かったからいいのですが、これが非常に分かりにくいのです。
というか、普通は何が影響するのかすら分かっていません

この時、どんな設計条件が品質に影響を与えるかを調べるのが品質工学で出てくる「パラメータ設計」となります。
今回は詳細には説明しませんが、SN比と呼ばれる指標を用いて、各パラメータの機能への影響度を確かめます。
やはりここが一番難しく、時間がかかると思います。

ただ個人的には目の前の品質トラブルに対して、設計から疑えるかどうかが一番のハードルです。
ここを乗り越えたら後はやることをやるだけです。

なぜ品質工学を取り上げたのか

なんで今品質工学を取り上げたのか?
それは現在流行っている機械学習・ディープラーニングで起きるリスクのためです。
これらAI技術は必ずデータが必要となります。
そのデータを用いて最適な解を出しますが、これが危険です。
なぜならそれらデータ中での最適な解しか出てこないからです。

僕たちエンジニアに求められているのはイノベーションです。
これは「最適な解」ではなく「最高の解」です。
この最高の解が手元のデータのみで出てくるのかを疑う必要があります。

特に会社に入りたての専門技術に精通していな人は、データ解析すればとりあえず大丈夫ってならない様に注意して欲しいです
もちろんAI技術は僕達を助けてくれます。ただこれに頼ってばかりでは、技術の本質を追求しなくなってしまうので注意です。

データくん
よく分からんからとりあえずデータ解析しとけばええわ

というのも、最近僕の会社では何かあったらとりあえずデータ解析をしろとなっています。
専門技術の勉強もほとんどしていない後輩が、意味のないデータ解析に時間を使っているのを見て、何か違うなと感じています。
今は過渡期だとは分かっています。ただ、この過渡期にどんな方向性を示せるかが、今後の技術力を分けると思っています。

余談

上記の考えってなんかに似ているなと思っていたら、「失敗の本質」という本に出ていたと気づきました。
日本軍と米軍の学習方法の違いで、米軍はダブルループと呼ばれる学習方法でした。
ダブルループとは、

学習の目標、問題そのものが本当に変わらないか?という疑問を持ったうえで、
再びその問題を再定義したり、変更することもいとわない学習

のことです。これも応用出来るかもしれません。

あと、僕は書いた「考え方の記事」も何か似てるなと思いました(結局同じことを違うテーマで言ってるだけかも)。もし参考になれば。

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